2008年2月11日月曜日

2007ビンテージ考


いろいろな方から2007どうなの?
との連絡を頂きましたので、この場を使って回答させて頂きます。



フランス全体にブドウには非常に厳しかった年。
4月の気温が平年をかなり上回り、特にブルゴーニュでは花付きがとても早く、2003年のようにまた8月中に収穫か(花付き後100日後が収穫と言われている)と言われる。

ボルドーの花付きは白ブドウ、メルロ種は問題なしだったが、カベルネ種の花付き期から天候が悪く、気温も下がり、場所によっては3週間も花付きに時間がかかる。
そのため、ブドウの房ひとつを見ても均等に結実しないブドウが多い。

5月から8月までイメージ的にいつも小雨混じりの天候だった気がするほど天候が良くない。
湿度が高い分、ウドン粉病の発生の確率が高まり、ブドウの木への処置がいつもの年より多い。
知り合いのビオワインを造っている造り手は、例年より10倍の畑の処置をせねばならず、夏のバカンスも取れないほど。

かなり悲観的な状況になっていた8月最終週から急速に天候が回復。
9月はほぼ降水量なしの好天が続き、白ブドウは9月10日頃から、赤ブドウは9月下旬から収穫が始まる。
白ブドウは夏がフレッシュだったおかげで、きれいな酸味が残りとても良い状態。
ただ、赤ブドウは場所によりまた、カベルネが熟すまで待てなかった造り手は、かもしを短くするなどの醸造をしないと青臭いワインになりがち。

知り合いのとある造り手はカベルネ・ソーヴィニョンの収穫が10月30日から始まる。(通常は遅くても10月上旬から)
メルロは問題特になし。

グランシャトーでは、選果、畑での適切な処置、蔵に入ってからの再度の選果作業等により、かなり質の高いワインになっている。しかし、花付きの悪さ、厳しい選果などの理由から2割ほど平年より終了が落ちている所が多い。
その選果が出来ないシャトーは少し厳しい状況と推測出来る。

ワインがそろそろタルに入り少し落ち着いてきたので、取引先のシャトーで2007年を試飲。
率直な印象でイメージよりも全然悪くない。

シャトーの方は、こんなに苦労した年は初めて、80年代の技術(ブドウ栽培や醸造を含め)しか無かったら、と思うと本当に怖い。それのおかげで2005年のようなワインの質にはならないだろうけど、80年や84年のようなワインにもならないだろう。

他のシャトーの方は、うちはカベルネを10月末まで待ったからとてもいい状態で収穫できた。
収量は3割減ってしまったけど、カベルネをこの状態までにしたのは、グラン・クリュのシャトーでも無いだろう。こういう年ほど造り手の差と力量が試される。ものすごく自信がついた。

ここからは私の予想および感想。
ボルドーのグラン・クリュのシャトーでも特に上位クラスのシャトーは、それなりのとても良い質のワインを造ってきているはず。
ただ、収量が下がり絶対量が少ないのと、近年の買い手の引きの強さで価格はまず下がらないどころか上がる可能性が大。
以前の価格を知っている方は、とても高くて手が出せない価格が続く。
ワインの質のイメージでは、果実味、バランス、タンニン等申し分ないレベルだが、余韻の長さ、複雑さが例年より少し物足りなく感じるはず。

グラン・クリュのシャトーでも中堅どころのシャトーは、価格の付け方がとても難しい年になりそう。
今の所の噂では、下げざる得ないだろうという意見が大半だが、収量が下がり、栽培にも通常より費用がかかっているので、シャトー側は絶対に下げたくないはず。
さてどうなりますやら。
プリムール試飲会にいらっしゃる方は、ご意見ご反論お待ちしています。

次に私が主に扱っている、プティ・シャトーの場合。
扱いに至るまでかなりの過程があり、良いとこどりをしているが、その取引先の中でもかなり差がある。
ブドウの潜在力を理解して、それに見合った醸造をしている所は、この2007年らしく上品でエレガントなワインに仕上がっている。
反対に常に濃縮感や果実味の強さなどで勝負しているワインの造り手は、厳しい年。

最後にビオワインの造り手。

夏まで彼らに会いに行くと、悲壮感と憔悴しきった顔をしていたが、9月の好天で持ち直した模様。
「何度薬に手をつけようか・・・」とこの言葉だけ聞いたらちょっと危ない発言も。
ワイン自体は、特に白ワインはとても良い出来。赤ワインは厳しいが、エレガントさやブドウの持つ果実味を引き出すような造りをしている所は、問題なし。
ただ、収量はかなり下がっている。

いろいろな方に聞かれる「良い年」か「悪い年」かの二者選択なら悪い年と答えざる得ないと思う。
でもそれは、気候やブドウ栽培にとっての話であって、ワインになった時の話ではない。
そのブドウ栽培でも生産者によって、収穫日のチョイスがあり、また様々な栽培方法がある中で自分に合っていると信じている方法を行い、最大限の努力をしている。
そしてそのブドウの状態を見極め、それに合った醸造をしている。
毎年、全く同じ質のブドウと言うことはあり得ないので、そのあたりのサジ加減は細かく話を聞いていくとたまについて行けないレベルの話になってしまうほど、造り手は考えてワイン造りをしている。
だからと言うわけではないが、良い悪いの二言て言うのはとても厳しく、造り手一人一人の特徴を把握しなければならないと思うのです。。。

1 件のコメント:

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たいへん参考になりました。ARIGATOU!
日本語ですみません。

VERY GOOD !!